残留兵

米国国立公文書館を訪れる日本人研究者の間では、国務省の資料が最もよく見られているそうです。今まで私達は、主に軍事関係の資料を調査してきましたが、最近は非軍事関係の資料もよく見ています。私が先日見たのは国務省の資料で、1955年から1959年までに、東京の米国大使館が米国国務省に宛てた文書でした。選挙、政治、外交に関するものなど日本の状況が簡潔に述べられ、その当時の日本の様子を垣間見ることができます。

 

1955年の資料の中に"Ex-Japanese Army Holdout in South pacific"というタイトルのものがありました。Japanese Holdoutとは、残留日本兵のことを意味します。資料の内容は、ペリリュー島で旧日本陸軍残留兵(韓国籍の徴兵労働者)が1955年5月に捕まったというものでした。グアム島で尋問された後、日本政府に引き渡されたようです。

 

また1954年12月にホーランディアで四人が投降し、翌年日本へ戻ったことが書かれていた資料もありました。残留日本兵については横井庄一氏、小野田寛郎氏や、その他にも現地に残った人たちがいたことは 知っていましたが、戦争が終わって十年近い歳月が過ぎているのに潜伏、戦いをしている人たちが何人もいたことに資料を読んでみて今さらながら驚きました。彼らにとってこの十年間はどのようなものであったのでしょうか。何を考え、何を思い、日々を過ごしていたのでしょうか。彼らが戦後から見つかるまでのこの十年間どのような生活を送っていたのか、という点については記載されていません。生きていくことに必死だったかもしれませんが、遠く祖国を離れ、孤独とやるせない気持ちがあったのではないかと思います。(NM)