終戦後の日本~米国国立公文書館写真閲覧室より~

第二次世界大戦終結からサンフランシスコ講和条約締結までの間、連合国軍の占領下に置かれた日本ですが、政治的な内容ではなく、当時の一般市民の生活に関連して、米国国立公文書館に収められているたくさんの写真の中から三枚の写真をご紹介したいと思います。

 

まず、戦後の日本国民が餓えを凌ぎ、逞しく生き抜いた写真を紹介したいと思います。この写真の他にも、廃墟の後の土地には雑草はなく、すべて野菜や果物で覆われていた写真もありました。戦争を知らない時代に生きている私にはとても印象に残った写真の一つです。

 

この写真は戦後間もない1945年10月に撮影された東京の写真です。写真中央奥には国会議事堂の上部が小さく見えています。コンクリートの建物や蔵は原型のままに見えるものの、民家はトタンを繋ぎ合せた様な仮の作りで、辺りは破壊された状態です。とても今の東京からは想像も付きません。それでも、その狭い敷地を利用して、土地を耕し、種をまき、野菜や果物を育てて人々は生き抜いて来ました。

Photograph SC213554; 1 Oct 1945“over the ruins of their homes, tiny gardens flourish, tenderly cared for by the people who know that they must make the soil product or suffer privation because of scarcity of food.”; Records of U.S. Army Signal Corps, Record group 111-SC; National Archives at College Park, MD

 

ここ米国国立公文書館には、見ていて悲しくなるような、第二次世界大戦中の様子や終戦直後の失望する国民の姿、焼野原状態の日本各地の様子を撮った写真は山ほどあります。終戦後の混乱から戦後の復興、そして高度経済成長期を実現させた「日本国民の強さ」を表すこの様な写真を見て感じる事は、出身国や人種を問わず多くの人の心に残るのではないでしょうか。

 

1948年5月14日に東京で撮影されたお祭りの様子です。残念ながら写真の裏に記載されているキャプションに、細かい地名や祭りの名前等は載っておりませんが「戦後混乱期」と言われる時代にも関わらず、活気に満ちた写真です。

Photograph SC300250; Japanese Carnival 14 May 1948“Japanese children carry a decorated shrine during ceremonies celebrating their carnival held in Tokyo, japan.”Photographer- Hancock Photograph by U.S. Army Signal Corps : Records of U.S. Army Signal Corps, Record group 111-SC; National Archives at College Park, MD

 

皆さんは東京ローズと呼ばれた女性たちの事をご存知でしょうか。東京ローズとは、太平洋戦争中に日本軍が連合国側に向けて行ったプロパガンダ放送の女性アナウンサー達のことで、アメリカ軍将兵がつけた愛称です。

次の写真は、その東京ローズの一人、アイバ・戸栗・ダキノさんの写真です。アイバさんは、日系二世として米カリフォルニア州で生まれ育ちましたが、来日中に開戦となり帰米が叶いませんでした。彼女は日本での生活の為に、東京ローズとしてアメリカ軍将兵達に語り掛けたのです。帰米した後の1949年に国家反逆罪で禁固刑を受け、6年間服役しました。時代が変わるにつれ判決を疑問視する声が高まり、1977年には、フォード大統領の恩赦で30年近く剥奪されていた市民権を回復し晩年はシカゴで暮らしました。戦争は、たくさんの人の心を閉ざし、運命をねじ曲げました。彼女もまた、戦争によって波乱万丈な人生を強いられた一人であり、戦争の被害者であるというべきなのかもしれません。(TI,RB,HL)

 

読書をするアイバ・戸栗・ダキノさんの写真

“Photograph SC289866;“Mrs. Iva Toguri D'aquino, The former "Tokyo rose" of pacific war days. Now spends most of her time reading historical novels and devoting herself to her duties as housewife. Mrs. Toguri graduated from U.C.L.A. in 1941 where she majored in psychology and zoology. On Oct. 25th, 1946 She was released from Sugamo prison for lack of sufficient evidence to support her treason charge. She now resides at 396, Ikejiri machi in the Setagaya ward, Tokyo, Japan”Photographer- Hancock Photograph by U.S. Army Signal Corps : Records of U.S. Army Signal Corps, Record group 111-SC; National Archives at College Park, MD

 

(TI,RB,HL)