日本のお祭り

日本人にとって祭りとは、なくてはならない伝統行事の一つと言えるのではないでしょうか。人や土地との繋がりが希薄になった現代において、祭りに参加しその土地や人と触れ合うことは、絆を深め、日本人が大切にしてきた文化を理解する事にもつながります。

 

お祭りと聞いてまず私が思い浮かべるのは、神輿を担ぎ町内を練り歩く姿ですが、各地域や季節よってまったく異なるものの様です。春は豊作を願うお祭り、夏は疫病退散を目的とした祭り、秋は無事に収穫できた事を神に感謝する祭りなどもあるそうです。それぞれに違うお祭りだからこそ、土地ならではの特徴があり、季節情緒があふれているのかもしれません。 

 

ここ米国国立公文書館の5階では、日本の伝統文化や伝統行事を撮影した写真が所蔵されています。その中にお祭りの写真もありますので何点か紹介させて頂きます。       

 

下の写真は、戦後まもない1946年9月15日に撮影された東京の向島にある牛嶋神社のお祭りの様子です。牛嶋神社の祭礼は町内を安泰祈願巡行する神輿が3箇所に分かれて集まり、牛嶋神社に向かって渡御します。境内には自分の体の悪い部分と同じ場所を撫でると、病気が治ると言われている「撫牛」があり、神社にしては珍しい狛牛もあるそうです。

Photograph No.SC-216887 Religion-Shrine 9/15/1946 Record Group111: National Archives at College Park, MD


Photograph No. SC-216888 Religion-Shrine 9/15/1946 Record Group111: National Archives at College Park, MD


次の写真は、東京、浅草の三社祭りの様子です。三社祭りは三社の神話に基づき船祭が始められたのが始まりといわれているようです。浅草寺で祭礼を行い、お払いを受けたあと各町内会を練り歩く神輿渡御は、現在では150万人もの人手で賑わうそうですが、終戦してまだ3年も経っていない1948年5月の写真からは現在のお祭りの規模は想像できませんが、地元の人と子供達の熱気に溢れた、楽しい様子が伝わってきます。

Photograph No.SC-300231 Kanda Asakusa Shrine Festival 5/17/1948 Record Group111: National Archives at College Park, MD


Photograph No.SC-300232 Kanda Asakusa Shrine Festival 5/17/1948 Record Group111: National Archives at College Park, MD


次の写真も同じく東京、神田のお祭りです。こちらは9月15日に開催されたお祭りで、キャプションには「Japanese Thanksgiving」と書かれています。秋の収穫祭でしょうか?

Photograph No.SC-279681 Japanese Thanksgiving 9/15/1946 Record Group111: National Archives at College Park, MD


Photograph No.SC-279679 Japanese Thanksgiving 9/15/1946 Record Group111: National Archives at College Park, MD


次は1948年5月9日に撮影された鎌倉、鶴岡八幡宮の流鏑馬神事の写真です。そのルーツは1187年源頼朝が流鏑馬を催行した事に始まるといわれているそうです。キャプションには戦争以来始めて再開された流鏑馬と書かれています。久しぶりに開催された流鏑馬を見つめる人々はどんな想いだったのでしょうか。

Photograph No.SC-300225 Archery on Horseback 5/9/1948 Record Group 111: National Archives at College Park, MD


日本国内で一年を通じて行われるさまざまな祭りには今も昔も「祈り」「感謝」「願い」といった日本人の生きる為の想いが集約されているのではないでしょうか、だからこそ、代々受け継がれてきた祭りを大切に守り、次の世代に伝えていく事が大事であり、これは日々私が仕事を通じて感じている、日本の歴史や過去を若い世代につなげていく事にもつながるのではないかと思います。(SW)