義和団の乱の写真

米国国立公文書館の写真資料室の壁際にはキャビネットが並んであり、資料請求のための手助けとなる各レコードグループのフォルダーが入っています。たまたま開けた引き出しの中に、Boxer Rebellionとタイトルのついたフォルダーがあり、写真が入っていました。これらの写真がとても興味深く、今回はそこにあったいくつかの写真をご紹介をしたいと思います。

 

Boxer Rebellionとは中国の義和団の乱のことです。1900年6月、義和団が北京にある公使館区域を包囲攻撃しました。その義和団を清の西太后が支持し、欧米列強に宣戦布告をしました。これに対し、日本、アメリカ、イギリス、ロシア、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア=ハンガリーの8カ国の連合軍で、出動し、約2か月後に北京を制圧し、他の地域も含めてこの乱を鎮圧しました。

 

ここにある写真に目を通してみると、1900年から1901年までの中国の風景や建物、アメリカ軍だけでなく、日本やインド兵を含むイギリスなど各国の軍服や装備なども撮影されています。

 

近年、中国は経済的発展が目覚ましく、新しい建物が立ち並び、昔と様子がかわってきていますが、中国と言えば広大な土地と歴史的建造物を連想します。

 

Photograph No. 74992; “Scene within the Summer Palace, near Pekin. 1901.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

上の写真は、1901年に撮影されたSummer Palace (頤和園:いわえん) です。中国北京の北西にあり、北京最大の庭園です。連合軍により建物の一部が壊され、その後修復されたそうです。1998年にはユネスコ世界遺産に登録されているので、この場所のことをご存知の方もいらっしゃると思います。頤和園の写真がいくつかあり、どれを見ても建物のすばらしさや自然の美しさが感じられ、機会があれば一度は訪れてみたいです。

 

Photograph No. 88833; “Catholic Mission in French Legation District, Pekin.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

上の写真はカトリック教会です。瓦屋根の中国独特な建物の真ん中にゴッシック様式の建物が写っており、洋風と中国建築の組合わせに目を引かれました。教会に掲げられているのはフランスの国旗のようです。教会の前にあるのは塹壕です。

 

 

軍服や装備は、国によって違いもありますが、同じ国でも歩兵、騎兵、工兵など部隊によって違います。軍服についてあまり気に留めたことがなかったのですが、各国の軍服をじっくりと見てみると特色があり面白いです。

 

 

日本軍の砲兵です。一番左は下士官です。

 

Photograph No. 74924; “Japanese Artillerymen. First man on left is N.O.C. Pekin. 1900”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

ドイツ軍の砲兵です。ヘルメットが特徴的です。

 

Photograph No. 74930; “German Regular Artillerymen, Pekin. 1900.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

イギリス軍の砲兵(12th Royal Field Artillery)。一番後ろにあるのは種類はわかりませんが大砲です。6頭の馬で引くほどなので、とても重いのでしょうね。

 

Photograph No. 74948; “12th Royal Field Artillery.(British) with Chinese Relief Expedition. Pekin. 1900.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

イタリア軍の騎乗歩兵。帽子に細長くとがったようなものがあり、マントを着用しています。

 

Photograph No. 75078; “Italian Mounted Infantry.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

Photograph No. 88865; “Japanese troops on the advance to Pekin, China. August.1900.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

上の写真は1900年8月、北京に向かって行進をしている日本兵たちを撮影したものです。日本兵、ロシア兵、イギリス兵、アメリカ兵、フランス兵により構成された約2万人弱の部隊が天津から北京に向けて出発をしました。

 

Photograph No. 88955; “Red Cross Cart. Chinese Relief Expedition Activities.”;  Records of the Office of the Chief Signal Officer, Record Group 111-SC; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

これは赤十字社の馬車です。西部劇に出てくる幌馬車の小型版のような感じですが、よく見ると馬車の後ろにある箱のようなものにマークが入っており、このときにも赤十字社により救護活動が行われたことがわかります。

 

上記の写真のキャプションに書かれていますように、当時のアメリカよる中国への出兵は「Chinese Relief Expedition」といわれています。義和団の乱関係の写真は、このキャビネットに入っているもの以外にもまだ米国公文書館にはあるので、時間がある時にこれらの写真も併せてゆっくりと見てみたいです。(NM)