ハワイの日系移民

今年は、ハワイ日系移民150周年、ブラジル日系移民110周年を迎える年であることを報道で知りました。日本人は世界各国に移民していますが、その中でもハワイが最初の集団移民の土地であり、一番歴史が長いことになります。

 

はじまりは、150年前の1868年に約150名の日系移民が日本からハワイに渡りました。当時、商人であり、また在日ハワイ領事でもあったユージン・ヴァン・リード(Eugene Van Reed)が江戸幕府との間の友好交渉で約300人分の渡航許可を受けていました。しかしながら、日本は幕末維新期の激動期にあり対応できず、また明治新政府は旧幕府と交わした交渉を認めませんでした。その為、既に渡航準備を整えていたヴァン・リードは明治政府に無許可で最初の日系移民をハワイに送り出したそうです。この年は、明治元年にあたり最初の移民者を『元年者』と呼ぶそうです。(参照:ハワイ日本人移民到着150周年記念を祝して:https://kizunahawaii.org/

 この節目の年に、ここ米国国立公文書館に当時の関連資料はあるのだろうかと興味がわきました。ハワイ日系移民の関連資料の多くはサンフランシスコの分館に所蔵されているようなのですが、今回は米国国立公文書館のサイト上やここに保存されている一部の資料をご紹介したいと思います。

 

こちらは、日系移民が最初にハワイに渡った年と同じ1868年に記録され米国国務省が保管したハワイ政府の覚書です。この中の一面に、議会でのハワイ国王(ロト・カメハメハ - カメハメハ5世)の声明文がありました。そこでは、日系移民や貿易について次のように触れており、『Our negotiations with Japan have, so far been successful. Important and favorable results may be expected from the opening of trade with, and immigration from, that kingdom. 』(日本との交渉はこれまで成功しており、ハワイ王国との貿易開始や日本からの移民が重要かつ有効な効果が期待されるであろう。)としています。

 


RG 84 Records of Foreign Service posts, Diplomatic Posts Hawaii, Volume 026. Notes from Hawaiian Government (Entry: UD29) No.4 Hawaii – U.S. Legation Archives Notes from Hawaiian GOVT. January 17, 1861 – March 9, 1869. Department of State; National Archives at College Park, College Park, MD.

 

こちらは、在ハワイ王国米国弁理公使のジョージ・W・メリル(George W. Merrill)に宛てた1886年3月29日付の手紙です。ハワイ王国と日本間で締結された移民条約(日布渡航条約)に関して触れています。

RG 84 Records of Foreign Service posts, Diplomatic Posts Hawaii, Volume 029. Notes from Hawaiian Government (Entry: UD29) No.7 Hawaii – U.S. Legation Archives Notes from Hawaiian GOVT. August 21, 1882 – November 21, 1890. Department of State; National Archives at College Park, College Park, MD.

下記は、米国国立公文書館のサイトからです。1908年6月9日に誕生された日系人(Kaoru Shiibashi )の方の出生証明書です。この頃にはアメリカ合衆国の併合により、証明書にはハワイ準州(Territory of Hawaii)の印がされています。

 

National Archives Identifier: 6587579. Certificate of Birth of Kaoru Shiibashi; Immigration Arrival Investigation Case File for Kaoru Shiibashi (30309/27-5), 1908-1931; Immigration Arrival Investigation Files, 1884 – 1944, Record Group 85: Record of the Immigration and Naturalization Service, 1787 – 2004. National Archives at San Francisco (RW-SB) San Bruno, CA. https://catalog.archives.gov/id/6587579

 

また、上記の出生証明書のご本人、椎橋馨さんに関する日本語の証明書も写真と共に載っていました。

 

National Archives Identifier: 6587578. Japanese Identity Paper of Kaoru Shiibashi, 

Immigration Arrival Investigation Case File for Kaoru Shiibashi (30309/27-5), 1908-1931; Immigration Arrival Investigation Files, 1884 – 1944, Record Group 85: Record of the Immigration and Naturalization Service, 1787 – 2004. National Archives at San Francisco (RW-SB) San Bruno, CA. https://catalog.archives.gov/id/6587578

 

この日本語の証明書資料を紹介している米国国立公文書館サイトは検索用となりますが、それとは別の米国国立公文書館の教育用サイトである、“Doc Teach”というサイトの中にも、この証明書資料が紹介されています。そのサイト上には、この証明書資料に関連した追加情報として、この椎橋馨さんはハワイで生まれた後、幼児期に日本に渡り、23歳の時に自身の母国を見るためにサンフランシスコに渡米した事、そこで移民検査官に疑いを持たれた事、第二次世界大戦中は行政府の執行命令によりワイオミング州のハート・マウンテンにある日系アメリカ人強制収容キャンプに送られた事などについてまとめられています。(参照:Japanese Identity Paper of Kaoru Shiibashi: https://www.docsteach.org/documents/document/japanese-identity-paper-of-kaoru-shiibashi

 

日系移民は1924年に排日移民法が施行されるまでに、およそ20万人以上がハワイに渡ったとされています。過酷な労働や国の政策、戦争などの時代の流れに翻弄されながら日系人が作り上げてきた歴史がハワイには残されていると思いました。(TI)