1918年のインフルエンザとの戦い

2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) は、現在では世界中に広がり、経済的にも社会的にも非常に深刻な打撃を与えつつあります。自分自身もいろいろな不安を抱えながら毎日を生きていますが、今の状況をなんとか冷静に客観的に考えなければと思っています。

 

米国国立疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)は米国の感染症対策の総合研究所であり、現在の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)においても、米国内外問わず、絶えずいろいろな情報の収集や研究をし、対策を提示し、世界的にも主導的な役割を果たしている機関です。(参照:https://www.cdc.gov/

 

この米国国立疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)には、米国の歴史の中で深刻な影響を及ぼした感染症についての歴史的記録や医療関係や一般の人々の取り組みに関するサイトもあります。今回は、その中から、今から102年前の1918年に米国で爆発的な感染を起こしたインフルエンザ問題についてのサイト、そして関連して米国国立公文書館にある写真についてご紹介をしたいと思います。

 

上記のサイトは、上記の機関のサイトの、「過去における大流行」(Past Pandemic)という項目の中の、「1918年の大流行」(1918 Pandemic)という小項目の中にあります。(1918 Pandemic (H1N1 virus):https://www.cdc.gov/flu/pandemic-resources/1918-pandemic-h1n1.html

 

現在の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)問題を除けば、これまでの米国の歴史では、この1918年のインフルエンザの大流行がもっとも深刻なものでした。このサイトによれば、世界的には1918年から1919年の間に、当時の世界人口の3分の1にあたる5億人が感染し、また、米国内では、1918年の春に米軍兵士が最初に感染から始まり、結果としては、この時のインフルエンザは米国内での67万5千人の死者を含み、世界では少なくとも5千万人にも上る死者を出したと書かれています。

 

1914年7月から1918年11月まで続いた第一次世界大戦の死傷者は約4千万人と言われているので(参照:Casualties of World War I: https://www.facinghistory.org/weimar-republic-fragility-democracy/politics/casualties-world-war-i-country-politics-world-war-i )で、この戦争の死傷者数よりもはるかに当時のインフルエンザの死者数は上回っていたという事実は、当時のインフルエンザの猛威がいかにすさまじいものであったかを物語っているかと思います。

 

下記のサイトは、この1918年のインフルエンザ大流行について、「1918年の大流行:3つの波」( 1918 Pandemic Influenza: Three Waves)としてその流れを説明しています。(https://www.cdc.gov/flu/pandemic-resources/1918-commemoration/three-waves.htm

第1次世界大戦が続く中、米国は1917年4月に参戦を決めてから、米軍兵士が続々とヨーロッパに送られることになりました。こうした大量の兵士の移動も、インフルエンザの大流行の一因となりました。米国では、1918年3月から第1波が、そのあと秋に最も大きな第2波が起こり、さらに翌1919年春には第3波も起こり、ようやく夏になって収拾していったことも書かれています。

 

上記のサイトには、「私達は記憶する。そして私達は備える。」(We remember. We prepare. )と書かれているのですが、これは2018年に、1918年のインフルエンザから100年目という節目の意味でもまた当時の歴史的体験と格闘を忘れないし、そのことが将来的なインフルエンザにも備えることにもなるという意味を持っていたかと思います。が、2018年から2年後の今、皮肉にも、新たな感染症であるコロナウィルスが猛威を振り始めている現在、本当に私達人間とこうした感染症との戦いは昔も今も、続いていくのだということをあらためて実感せずにはいられません。その意味では、常に挑戦に絶えず立ち向かっていかなければなりませんが、同時に、時間をかけながらも、そうした感染症を一つ一つ克服してきた歴史も忘れてはいけないと思います。

 

米国国立公文書館のサイトからも、この1918年のインフルエンザに関する写真資料があります。

 


Left: Fighting Influenza in the United States. To successfully combat the influenza which was stricken a number of our army and navy boys, a special camp has been fitted up on the grounds of Correy Hospital Brookline, MA. Nurse wearing a mask as a protection against the disease which is contagious filling a pitcher water hydrant. 9/13/1918. 165-WW-269B-5: https://catalog.archives.gov/id/45499297 

 

Right: Mask for Protection against Influenza. Typist wearing her influenza mask. Aroused by hold that the disease has taken in New York City, N.Y., practically every worker has muffled their faces in gauze masks as a protection against the disease. 10/16/1918. 165-WW-269B-16:

https://catalog.archives.gov/id/45499321

 

Both are from File Unit Medical Department-Influenza Epidemic 1918, 1917-1918 Series: American Unofficial Collection of World War I Photographs, 1917-1918, Record Group 165 (Records of the War Department General and Special Staffs, 1869-1952). 

 

上記の左の写真は、マサチューセッツ州内の特設病院ですでにたくさんの米陸軍及び海軍の兵士達の看病をしている看護師が水を汲んでいるところであり、右の写真はタイプ仕事をしている職員の様子ですが、どちらもガーゼのマスクをしています。

 

下記の写真は、ニューヨーク市内の道路の清掃職員と交通整理をしている警察官の様子です。顔のほとんど全面を覆うような大きなガーゼのマスクをしながらも仕事に従事しています。

 


Top: Masks as a Protection against Influenza. Street cleaner wearing the influenza mask. 10/16/1918. 165-WW-269B-34: https://catalog.archives.gov/id/45499357

 

Bottom: Masks as a Protection against Influenza. Traffic “Cop” in New York City wearing the gauze mask. 10/16/1918. 165-WW-269B-0: https://catalog.archives.gov/id/45499301 

 

Both are from File Unit Medical Department-Influenza Epidemic 1918, 1917-1918 Series: American Unofficial Collection of World War I Photographs, 1917-1918, Record Group 165 (Records of the War Department General and Special Staffs, 1869-1952). 

 

下記の写真の1枚は、赤十字の職員が兵士のためにガーゼのマスクを作っている様子であり、もう1枚は、キャンプ内で一仕事をしたあと、塩水でうがいをしている兵士の様子です。ささやかなことかもしれませんが、感染を防ぐための手段としては非常に重要であったと思います。


Top: Masks for Protection against Influenza. Red Cross workers making anti-influenza masks for soldiers in camp. Boston, Massachusetts. 5/12/1919:  165-WW-269B-26: https://catalog.archives.gov/id/45499341

 

Bottom: Protection against Influenza. Men gargling with salt and water after a day working in the War Garden at Camp Dix. This is a preventive measure against the epidemic of influenza which has spread to army camps. 9/24/1918: 165-WW-269B-6: https://catalog.archives.gov/id/45499299

 

Both are from File Unit Medical Department-Influenza Epidemic 1918, 1917-1918 Series: American Unofficial Collection of World War I Photographs, 1917-1918, Record Group 165 (Records of the War Department General and Special Staffs, 1869-1952). 

 

インフルエンザを含む感染症は、絶えず、人類の歴史の中にありました。自分の頭の中ではそれを理解しても、現在のような深刻なコロナ感染問題に直面するまではその怖さも実感することはありませんでした。しかしながら、私達は、感染症の歴史とそれに対する人間たちの格闘をあらためて学び、そして現状を客観的にとらえる努力をしながら、少しでも前進していけるようにしたいと思っています。(YN)