100年前の日本:米国国立公文書館のデジタル写真画像から

米国国立公文書館のサイトで資料の検索をすると、以前と比べてオンラインで閲覧できる資料が増えてきたと資料のデジタル化が進んでいるように感じます。つい先日知ったのですが、RG165WWの写真資料はデジタル化され、リサーチルーム内にあるコンピューターに入っていて、デジタルでの閲覧が可能になっていました。165WWというのはRecords of the War DepartmentのAmerican Unofficial Collection of World War I Photographs, 1917 -1918のシリーズです。第一次世界大戦期の頃の写真なので100年ほど前のものです。調べてみると日本関係の写真もあります。これらの写真はオンラインでも閲覧でき、今回は、その中の幾つかをご紹介したいと思います。

 

 

Ceremonies - Japan - Victory Arch erected in Hibiya Park. 165-WW-79F-1; Records of the War Department General and Special Staffs, 1860 - 1952, Record Group 165; National Archives at College Park at College Park, MD[online version available through the National Archives Catalog (National Archives identifier 23922399) at www.archives.gov; April 5, 2017]

 

上の写真は東京の日比谷公園です。1914年(大正3年)に第一次世界大戦が勃発し、日英同盟を結んでいた日本も参戦、そして、1918年(大正7年)11月11日には休戦協定が結ばれます。これはその休戦記念日を祝っているアーチのようです。祝賀と書かれ日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど連合国の旗が並んでいます。当時の服装も興味深く、男性は皆帽子をかぶっており、とんび(男性用コート)らしき外套を着ている人もいます。白黒写真なので色がわからないのが残念です。

 

Ceremonies - Japan - View of the parade and mass meeting held by several thousand persons in Tokyo, Japan in an effort to obtain manhood suffrage. 165-WW-79F-2; Records of the War Department General and Special Staffs, 1860 - 1952, Record Group 165; National Archives at College Park at College Park, MD[online version available through the National Archives Catalog (National Archives identifier 23922401) at www.archives.gov; April 5, 2017]

 

上の写真は東京での成年男子の普通選挙権のための集会の様子です。幟があり(文字は一番上の「普」しか判読できませんでした)、日本の旗を持っている人もいます。数千人が集まったとのことなので、とても大きな集会だったと思います。大正期は民主主義や自由主義の風潮が高まり、様々な運動が起こりました。1925年(大正14年)に普通選挙法が成立しますが、この写真が撮影された1919年(大正8年)頃は普選運動が盛り上がりを見せ、普通選挙を求めた集会やデモが多かったそうです。

 

American Red Cross - Refugees - Temporary Red Cross Hospital for Relief of the Flood Victims. 165-WW-48A-40; Records of the War Department General and Special Staffs, 1860 - 1952, Record Group 165; National Archives at College Park at College Park, MD[online version available through the National Archives Catalog (National Archives identifier 20804804) at www.archives.gov; April 5, 2017]

 

この写真の説明書きによると1916年10月に起きた洪水の被害者の救済のための仮設赤十字病院です。1917年10月の洪水の被災者の手当てをしている様子の写真もあるので、もしかすると説明書きの日付が異なるかもしれません。医師が聴診器を当て子供の診察をしており、看護師は今の看護師の服装とはかなり違い、長いスカートにすっぽりとかぶるタイプのナースキャップをかぶっています。家のたたずまいや提灯など、この時代ならではの雰囲気を感じます。洪水場所の記載はありませんが、写真の真ん中に赤十字社大阪支部とあります。

 

Industries of War - Silk - Silk production in Japan. 165-WW-225D-3; Records of the War Department General and Special Staffs, 1860 - 1952, Record Group 165; National Archives at College Park at College Park, MD[online version available through the National Archives Catalog (National Archives identifier 45489591) at www.archives.gov; April 5, 2017]

 

男性たちが桑の葉を集めている作業風景です。これらの葉は蚕のためのものであり、集めた桑の枝の束を馬に載せているようです。20世紀に入って、日本は世界一の生糸生産国家となり、養蚕業は盛んで、生糸は日本の主な輸出品の一つだったようです。生糸は好景気だったアメリカに大量に輸出され、ここの生糸はアメリカのコネチカット州に送られました。

 

私自身、この年代の写真を調査したことがなかったので、このシリーズのことは全く知りませんでした。思いがけず日本関係の写真を見つけ、大正時代の日本の様子を垣間見ることができ、とても興味く閲覧をしました。時間があるときに、もう少し日本関係の写真を探してみたいなと思います。(NM)